旅立ちの日に

荷物をまとめ、別れをすませ、
封筒に入れた大金を握りしめ、
予定と逆方向の電車に乗った。



電車に乗るその瞬間まで、
自分をも騙す大きな嘘に身を委ね、
これまでの日々を穏便に断ち切った。



行き先は定まらず、
まずは、海を見たいと思った。
頼れる大きな何かに寄りかかり、安心を欲した。



平日の人気のない朝の海を前に
酒を一杯あおりながら、
ただ、自らのちっぽけさを感じるばかりだった。