ゆるやかな戦争、死にはしない戦争

みんな違って、みんなバラバラ。
バラバラだけど、押し合いせめぎ合う
みんな自分が良くなるために、他人から奪う
幸せ自体を増やすのはする気がない
きっと、面倒だから
このゆるやかな戦争を
どう乗り切れるのだろう


中途半端な半人前は押し出された
勝ち目のない闘いに、彼はとうとう全力だせなかった
心優しい詩人は身をひいた
言葉の剣を、彼はとうとう振り下ろせなかった
草食人間は西に向かった
草を食べて生きられる彼は、戦う必要とうとうなかった
金持ちは高台に家を建てた
他人事のように、彼は最後までとうとう関わらなかった
脳天気者は背中をかがめた
隙間の空白地帯へ、彼は上手にもぐりこんだ
曲芸師は棒の上にたった
バランスよく、彼はとうとう棒から落ちなかった




僕は何者にもなれず、なにもできなかった。
必死で戦うことも死んでしまうことも、
優しいままで居ることも、
細々と生きることも、
お金に甘えることも、
自分を誤魔化すことも、
器用に生きることも。
ゆるやかな戦争で身体の肉や心や魂は、
餌にされ奪われ、細切れに目減りする。
死ぬほどではない苦痛。ゆえに、ずるずると変われぬ変わらぬばかり。



自然よ。これがお前の本当の望みなのか
神よ。これがお前の望んだ進化なのか
偉人よ。お前達の足跡は蹂躙されていまいか
人間よ。どこに向かって進もうというのだ



僕にできたのは
なんの役にも立たない嘆きと愚痴を口にするのみ